近年、AI・DX分野の人材需要の高まりを受けて、「リスキリング（学び直し）」を支援する補助金が個人にも拡充されています。
しかし、補助金を受け取るためには特定の条件を満たす必要があるため、詳細まで確認しなければなりません。
この記事では、個人が利用できる主要なリスキリング補助金制度をわかりやすく整理し、利用条件・申請方法・おすすめ講座まで詳しく解説します。
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そもそもリスキリングとは？
リスキリングという言葉を耳にする機会が増えましたが、正確な意味や、なぜ今注目されているのかご存じでしょうか。
まずは、リスキリングの基本的な定義と、政府がその支援を強化している社会的な背景について解説します。
社会人の“学び直し”を支援する取り組み
リスキリングとは、技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶこと、または既存スキルの更新を指します。
これは、従来のスキルが通用しづらくなる現代において、職業人として価値を発揮し続けるための重要な取り組みです。
たとえば、AIの進化によって業務の自動化が進む中で、AIを活用するスキルや、より創造的な業務に必要なスキルを新たに習得することが挙げられます。
単なる「学び直し」だけでなく、変化に対応し、新たな職業や役割で活躍し続けるための積極的な能力開発といえるでしょう。
政府がリスキリング支援を強化している背景
政府が個人のリスキリング支援を強化している主な理由は、日本国内におけるデジタル人材の深刻な不足に対応するためです。
AIやDX（デジタルトランスフォーメーション）の急速な進展により、多くの産業で構造変化が起きていますが、その変化を担うITスキルやデジタルスキルを持つ人材が追いついていない状況があります。
この人材不足を解消し、企業の生産性向上や個人のキャリアアップを後押しすることが、国全体の国際競争力を維持・強化するために不可欠です。
そのため、政府は補助金や助成金制度を整備し、個人が主体的に新しいスキルを学ぶことを強力に後押ししています。
【2025最新】リスキリングで利用できる個人向け補助金・助成金一覧
個人がリスキリングのために利用できる公的な支援制度は、複数の省庁や自治体から提供されています。
主な制度としては、以下のものが挙げられます。
- 教育訓練給付制度（厚生労働省）
- リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業（経済産業省）
- 母子・父子家庭自立支援給付金制度
- 自治体が実施する地域限定の補助金
これらは、対象者や支援内容が異なるため、自分の状況に合った制度を見つけることが重要です。
ここからは、それぞれの制度の概要や特徴を具体的に解説します。
教育訓練給付制度（厚生労働省）
教育訓練給付制度とは、働く人の主体的な能力開発やキャリア形成を支援するため、講座の受講費用の一部を支給する厚生労働省の制度です。
この制度は、主に次の3種類に分けられます。
- 一般教育訓練給付金
- 特定一般教育訓練給付金
- 専門実践教育訓練給付金
一般教育訓練給付金は、幅広い分野の講座が対象で、受講費用の20%（上限10万円）が支給されます。
特定一般教育訓練給付金は、キャリア形成に役立つやや専門的な講座が対象です。基本的に、受講費用の40%（上限20万円）が支給されます。
ただし、資格取得などをしつつ講座修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、教育訓練経費の50%（上限25万円）が支給されるので、条件を満たすことがおすすめです。
一方、専門実践教育訓練給付金は、AI、IT、看護など、より専門的かつ中長期的なキャリア形成に役立つ講座が対象です。受講費用の50%（年間上限40万円）が支給され、一定の条件を満たせば最大80%（年間上限64万円）まで支給額が引き上げられます。
どちらも利用するには、雇用保険の被保険者期間など、一定の条件を満たす必要があります。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業（経産省）
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業とは、経済産業省が主導する、個人のキャリアアップを後押しするための事業です。
この事業の特徴は、単に講座費用を補助するだけでなく、キャリア相談や転職支援までを一体的に提供する点にあります。
特にデジタル分野やAI関連のスキル習得を重点的に支援し、成長分野への個人の円滑な労働移動を促すことが目的です。
フリーランスや個人事業主など、雇用保険の対象とならない方でも利用しやすい制度設計が検討されることが多いため、幅広い個人にとっての選択肢となります。
公募時期や対象となる事業者が限られる場合があるため、経済産業省の公式サイトで最新情報を確認してください。
母子・父子家庭自立支援給付金制度
母子・父子家庭自立支援給付金制度とは、ひとり親家庭の父母の経済的な自立を支援するための制度です。
この制度には、主に「自立支援教育訓練給付金」と「高等職業訓練促進給付金」の2つが含まれます。
自立支援教育訓練給付金は、対象となる教育訓練講座の受講費用の一部（例：受講費用の60%）を支給するものです。
一方、高等職業訓練促進給付金は、看護師や保育士など、資格取得のために1年以上修業する場合に、その修業期間中の生活費の負担を軽減するために一定額が支給されます。
子育てと学び直しを両立させながら、安定した就業を目指すひとり親の方にとって、重要な支援策といえるでしょう。
自治体が実施する地域限定の補助金
国が実施する制度のほかに、各都道府県や市区町村が独自にリスキリングを支援する補助金制度を設けている場合があります。
これらの制度は、その地域に在住している、または勤務している個人を対象としている点が特徴です。
たとえば、東京都では「短期集中型資格取得支援訓練事業」として、デジタルスキルや専門資格の取得を支援する講座を無料で提供していることがあります。また、大阪府が独自の「スキルアップ支援金」を設けるなど、地域の実情に合わせた支援が行われています。
国の制度と併用できる場合や、国の制度の対象外となるフリーランスを対象に含む場合もあるので、お住まいの自治体の情報を確認してみてください。
リスキリング補助金を個人で活用するメリット
個人のリスキリングにおいて、補助金や助成金を活用することには多くの利点があります。
主なメリットとして、以下の4点が挙げられます。
- 高額な費用負担を抑えて新しいスキルを習得できる
- キャリアアップ・転職に活かせる
- 再就職支援としても有効
- AI・DX時代に即した知識を身につけられる
これらのメリットを理解することは、自己投資への第一歩を踏み出す助けとなるでしょう。
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
高額な費用負担を抑えて新しいスキルを習得できる
個人が補助金を活用する最大のメリットは、学習にかかる金銭的なコストを大幅に削減できる点です。
とくにAIやプログラミング、データサイエンスといった専門的なスキルを学べるスクールや講座は、数十万円と高額になるケースも少なくありません。
こうした費用を全額自己負担することは大きなハードルとなりますが、補助金制度を利用すれば、受講費用の50%や70%といった割合で支給を受けられる場合があります。
金銭的な不安が軽減されることで、新しいスキル習得への挑戦がしやすくなる点はメリットといえるでしょう。
キャリアアップ・転職に活かせる
補助金を活用して新しいスキルを習得することは、自身のキャリアアップや、より良い条件での転職に直結する可能性があります。
補助金の対象となる講座の多くは、現在の労働市場で需要が高いデジタル分野や専門資格に関連するものです。
これらのスキルを身につけることで、自身の市場価値が高まり、現職での昇進や、より専門性を活かせる職種へのキャリアチェンジが現実的な選択肢となります。
将来のキャリアの選択肢を広げられる有効な手段といえるでしょう。
再就職支援としても有効
リスキリング補助金は、現在離職中の方が再就職を目指す際にも力強い支えとなります。
たとえば、教育訓練給付制度は、雇用保険の受給資格を満たしていれば、離職後一定期間内の方も利用が可能です。
離職期間中に補助金を活用して新しいスキルや資格を取得すれば、ブランク期間への不安を解消できます。
また、自信を持って就職活動に臨むことができるようになり、円滑な社会復帰を後押しする効果が期待できるでしょう。
AI・DX時代に即した知識を身につけられる
多くのリスキリング補助金制度が、AI、データ分析、DX推進といった分野の講座を重点的に対象としています。
これは、政府がこれらの分野の人材育成を重要な政策課題として位置づけているためです。
補助金を活用することで、個人は時代の変化に即した最先端の知識やスキルを効率良く学ぶことができます。
AIに仕事を奪われるのではないかという不安を抱えるのではなく、AIを使いこなす側になるための学習を、公的な支援を受けながら進められる点は大きなメリットです。
自分に合ったリスキリング補助金制度の選び方
個人向けのリスキリング補助金には複数の種類があり、それぞれ特徴が異なります。
自分にとって最適な制度を見つけるためには、以下の3つの視点で比較検討することが重要です。
- 学びたい分野・職種で制度を選ぶ
- 在職・無職・子育て中などの状況で使える制度が異なる
- 給付率・上限額・支給タイミングも比較
これらのポイントを踏まえて、自身の目的や状況に最適な制度を選びましょう。
学びたい分野・職種で制度を選ぶ
まずは、自身が学びたいスキルや目指したい職種が、どの補助金制度の対象なのかを確認してください。
制度によって、支援の対象となる講座の範囲は異なります。
たとえば、「専門実践教育訓練給付金」は厚生労働大臣が指定した専門性の高い講座が対象であり、AIやIT分野の講座が多く含まれます。一方、「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、とくにデジタル分野へのキャリアチェンジが重視される傾向です。
学びたい内容と制度の目的が一致しているかを確認し、ミスマッチを防ぐことが大切です。
在職・無職・子育て中などの状況で使える制度が異なる
補助金制度は、利用者の現在の状況によって申請できるかどうかが決まります。
各制度には、対象者の条件が細かく定められています。
たとえば、「教育訓練給付制度」は、雇用保険の被保険者期間が一定以上あることが主な条件です。そのため、雇用保険に加入していないフリーランスや個人事業主の方は、原則として対象外となる場合があります。
一方で、経産省の事業や自治体独自の制度では、フリーランスも対象に含むケースがあります。また、「母子・父子家庭自立支援給付金制度」は、ひとり親であることが条件です。
ご自身の雇用形態や立場が、申請条件を満たしているかを正確に把握する必要があります。
給付率・上限額・支給タイミングも比較
各制度の支援内容、特に給付率、上限額、支給タイミングの比較も重要です。
支給される金額が多ければ、それだけ自己負担額は少なくなります。しかし、支給のタイミングが「講座修了後の後払い」なのか、「受講中に生活費支援も受けられる」のかによって、一時的に準備すべき資金額は大きく変わるでしょう。
たとえば、「専門実践教育訓練給付金」は給付率が高いですが、支給は受講中と修了後に分かれます。
自身の経済状況を考慮し、受講から支給までの資金計画を立てた上で、無理なく利用できる制度を選ぶとよいでしょう。
補助金を活用して学べるおすすめスクール・講座
個人向けのリスキリング補助金は、国や自治体が指定した多くの民間スクールや講座で利用できます。
ここでは、特にAIやIT分野のスキルアップに対応し、補助金制度の対象となることが多いスクールや講座の例を紹介します。
ただし、時期によって対象講座が変更になる場合があるため、必ず各スクールの公式サイトやハローワークなどで最新の情報を確認してください。
スキルアップAI（JDLA認定講座）
スキルアップAIは、AI分野の人材育成に特化したスクールです。
とくにJDLA、日本ディープラーニング協会が認定するE資格やG検定の対策講座に強みを持っています。
多くの講座が「専門実践教育訓練給付金」の対象に指定されています。
AIエンジニアやデータサイエンティストなど、専門職としてのキャリアを目指す個人に適した講座が見つかるでしょう。
キカガク（E資格対応）
キカガクも、AIやデータサイエンス分野の教育を提供しているスクールです。
スキルアップAIと同様に、E資格対応講座などが知られており、「専門実践教育訓練給付金」の対象講座を多く提供しています。
動画教材だけでなく、実際に手を動かしながら学ぶハンズオン形式の学習を重視している点が特徴です。
実践を通じてAI技術の基礎から応用までを学びたい場合に、選択肢の一つとなります。
侍エンジニア
侍エンジニアは、マンツーマンレッスンを特徴とするプログラミングスクールです。
Web制作、アプリケーション開発、AI活用など、幅広いコースが提供されています。
一部のコースが「教育訓練給付制度」の対象です。
専属の講師による個別のサポートを受けながら、学習を進めたい場合に適しているスクールといえます。
Aidemy Premiumc
Aidemy Premiumは、AI特化型のオンライン学習サービスです。
AIを用いたアプリ開発、データ分析、自然言語処理など、多様なコースが用意されています。
こちらも一部のコースが「専門実践教育訓練給付金」の対象です。
すべての学習がオンラインで完結するため、場所や時間を選ばずにAIスキルを学びたい場合に検討対象となるでしょう。
個人でリスキリング補助金を申請する際の注意点
個人でリスキリング補助金を活用する際は、手続きの漏れや条件の誤解によって、支援を受けられなくなるケースを防ぐ必要があります。
とくに注意すべき点は、以下の3点です。
- 申請時期・条件を確認（講座開始前が必須の場合あり）
- 対象講座が制度指定コースかチェック
- 自治体補助金は地域在住・在勤者限定の場合も
これらのポイントを事前にしっかり押さえておくことで、スムーズな申請につながります。
申請時期・条件を確認（講座開始前が必須の場合あり）
リスキリング補助金の多くは、講座の受講を開始する前に申請手続きを完了させる必要があります。
受講が始まってから、あるいは修了してから申請しても、補助金の対象外となるリスクが非常に高いです。
たとえば、「教育訓練給付制度」を利用する場合、受講開始日の原則1ヶ月前までに、ハローワークで受給資格の確認とキャリアコンサルティングを受ける必要があります。
学びたい講座が決まったら、まずはスケジュールに余裕を持って、申請のタイミングとプロセスを確認することが重要です。
対象講座が制度指定コースかチェック
学びたい講座が、利用しようとしている補助金制度の指定対象になっているかを、必ず事前に確認してください。
世の中にあるすべての講座が補助金の対象となるわけではありません。
厚生労働省や経済産業省、あるいは自治体がそれぞれの制度の目的に沿って認定した講座のみが、対象となります。
厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」などを活用し、希望するスクールや講座が正式に対象として登録されているかを、申し込みの前に自身でチェックしておくと安心です。
自治体補助金は地域在住・在勤者限定の場合も
都道府県や市区町村が独自に実施している補助金制度は、その地域に住んでいる、または勤務している個人に限定されることが一般的です。
これは、制度の目的が地域の産業振興や雇用対策にあるためです。
インターネットで魅力的な補助金を見つけた場合でも、まずはご自身がその自治体の対象地域に含まれているか（例：東京都の制度であれば、都内在住または在勤であるか）を最初に確認する必要があります。
対象外であれば申請はできませんので、ご注意ください。
個人向けリスキリングに関するよくある質問（FAQ）
個人のリスキリングや補助金制度に関しては、多くの方が疑問を持つ点があります。
ここでは、とくに寄せられることの多い、以下の質問について回答します。
- 補助金と給付金の違いは？
- 在職中でも申請できる？
- オンライン講座でも対象になる？
補助金と給付金の違いは？
法律上は「補助金」と「給付金」で厳密な定義や根拠法が異なります。
しかし、個人がリスキリングで利用する文脈においては、「どちらも原則として返済が不要な支援金である」と大まかに捉えて差し支えないでしょう。
一般的に「補助金」は特定の事業（リスキリングなど）の実施を支援するために、「給付金」は特定の条件（雇用保険への加入など）を満たした個人に対して支給されるもの、というニュアンスの違いがあります。
名称の違いにこだわるよりも、利用したい制度の具体的な支給条件や目的を正確に理解することが大切です。
在職中でも申請できる？
はい、会社員やパート・アルバイトとして在職中の方でも申請できる個人向けの補助金・助成金は多く存在します。
代表的な「教育訓練給付制度」は、雇用保険の被保険者期間が一定の条件を満たしていれば、在職中の方も利用可能です。
また、経済産業省の事業や自治体の制度においても、現在働いている方のスキルアップを支援対象に含むものが多くあります。
ただし、制度ごとに詳細な条件は異なりますので、ご自身の雇用状況が対象に含まれるかを事前に確認しましょう。
オンライン講座でも対象になる？
はい、多くのリスキリング補助金制度において、オンライン（eラーニング）で完結する講座も対象です。
近年、多様な働き方や学習スタイルに対応するため、国や自治体もオンライン講座の認定を積極的に進めています。
とくにAIスキル、プログラミング、Webデザインといったデジタル分野の講座はオンライン形式で提供されることが多いですが、これらも「教育訓練給付制度」の指定対象として多く登録されています。
時間や場所の制約がある方でも、補助金を活用して学びやすい環境が整ってきているといえるでしょう。
まとめ
この記事では、2025年最新の個人向けリスキリング補助金・助成金について、種類、対象条件、申請方法、注意点を網羅的に解説しました。
AIの台頭など変化の激しい時代において、キャリアを維持・向上させるためには主体的な学びが不可欠です。高額な学習コストへの不安がある方も、教育訓練給付制度や各支援事業を活用すれば、金銭的リスクを抑えてAIのような実践的スキルを習得できます。
とくに「どのスキルを学ぶべきか」に悩む方は、AI分野の専門家（九州工業大学 客員准教授 鈴木章央氏）が監修する当サイトの情報を参考に、最適な判断をしてください。
